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更新履歴を兼ねた日記
2025/06/08  [PR]
 

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ネタ書き残し。
きちんとサイトに上がるので、持ち返りは厳禁ですよ~。






 最近工藤邸の猫達の様子がおかしい。
 まあ化け猫(と言うと三匹揃って真っ赤になって怒るが、人間に化ける猫を化け猫といわずに何と言うのか)という時点で根本的におかしいのだがそれはさて置き。
 新一の身の回りの世話を請け負う白猫・サグルも、警護と庭整備と最近バイクに興味を持ち出した茶虎猫・ヘイジも、新一の恋人を自称し常に傍から離れない黒猫・かいとも、何故か交代で出かけてはくたくたになって帰って来て、新一が問い詰めても「だいじょーぶなんでもないよ~」との一言で全て誤魔化してしまう。最初の一週間は「大丈夫なら」と特に気にも止めず、次の一週間は取り敢えず問い掛けてはそれでも「まあいいか」と流していた。
 しかし、三週目になってからは疲弊の度合いに休むよう苦言を漏らしたが聞き流され、四週目に至って、ご近所にやけに猫の姿が多く見られることに気付き、そこから漏れ聞く言葉を知ってからの新一の行動は早かった。





『ただいまぎゃっ!!!?』
「お帰り」

 ここ一月のいつも通り、右に左に蛇行しながら戻ってきた黒猫が部屋に入った瞬間、足が床に貼りついた。飛びあがりたくてもうっかりクロスした足がそれを阻む。しかもこのままバランスを崩せば、入り口付近の床にどっぷりと塗られたトリモチ(?)に身体(というか毛皮)がべったりと取り込まれ激しく悲惨な事になる事間違いない。
 だが残酷なことに、疲弊した身体は容易く傾いで。

『うおおおおおおおお!!?」

 咄嗟に変化する。次の瞬間、右腕と右肩と右頬がもっちゃりとした何かに覆われて、その気持ち悪さに尻尾が膨れ上がった。

「おータワシ尻尾。面白ぇな、な、サグ」
「……新一様…」
「………ちょっと酷いで、あれ……」
「そんなに試してみたいならお前も行って来い、ほら」
「わーっわーっわーっごめんなさい俺が悪かったからお願いします押さんで押さんで!!!」

 感触の気持ち悪さに涙目になりながら見上げると、仁王立ちの癖に満面の笑みでヘイジの頭をこちらに押している新一と、正座ながら必死にそれに耐えている青い顔のヘイジ、彼とは反対側で正座しながら同じく青い顔でかいとを見ているサグル。
 一体何が!?と目でサグルに訴えるかいとの前に、足。そこから放たれる蹴りの鋭さは身を持って知っているかいとである。

「お帰りかいと」
「…………た……ただ、い、ま……」

 辿って見上げれば美しい微笑み。
 はっきり言って怖い。
 知らずかたかたと震える(下敷きにした感触の気持ち悪さもある)かいとに、新一はゆっくりとしゃがみこんで、何やらボウルらしきものをかいとの頭の上に掲げた。

「で? 何処に行ってたんだ?」
「え、あ、その、ぱ、ぱとろーる…」
「ほほう、パトロール。今この周囲にお前等の国の軍部の精鋭二個中隊が拝眉されてるってのにパトロール。前線思考なのか、自分の価値を分ってない王子様だな、テメェ」
「……えっと、それはその、ほら、今はしんちゃんが」
「つーたって二個中隊中ここに配備されたのは一個中隊のみ、もう一つの中隊はえらく遠い街までうろついてるみたいじゃねぇか」

 つらつらと言いながら、静かに傾くボウル。

「まあ? 俺にも慈悲はあるからな。お前達が言いたくないってんなら無理に聞く気は無かったんだよな」
「な、ならこのまま聞かずに置いておいたり、」
「置いておいたりしても良かったんだけどな、いきなり警備を厳重にとか言われて行くとこ行くとこ猫だらけなんて愉快な現象がこれだけ続くと流石に俺も口を挟まざるを得なくなると思わないか?」

 にっこり。

「因みにこれの中身は今お前が身体を置いているそれだ」
「!!?」
「……なあ、かいと。俺はお前達を信じてる。だからこそ国に関わる事だったら余計な口を挟んじゃいけないと思って黙ってた。『何してるか教えろ』なんて命令したくないしな。でもこのままお前等が無茶をし続けるなら、それをやめさせる為に命令するしかない。だけど俺だってそんな事はしたくない……」
「しんいち……」
「だから、こうする」

 ぼて。

「―――――ぎゃあああああああああああああああああああっ!!!??」

 直角に傾けられたボウルから重い粘着質の液体が、のってりとかいとのこめかみに乗った。
 その時かいとに走った激震は言葉に出来ない凄まじいものだった。

「いやああうぎゃああ気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いごめんごめんごめんなさい取って取って取って取って取ってうわああああああああん!!!!!!」

 どたんばたんと暴れる足がその感触の凄まじさを物語っている。青くなって縋り合うサグルとヘイジを背後に、慈愛に満ちながらも暗い影を負った新一はどんどんボウルを傾ける。当然液体はのろーりと重力に引かれて下―――かいとの頭へと落ちていく。
 ほぼ泣き叫びになっているかいとをさらりと無視してボウルをひっくり返しつつ、新一が楽しげに続ける。

「別に俺はいいんだぜ、お前達が隠したいならそのままでもな。でもこのまま延々と見張られっぱなしで仕事ってのも正直気分が悪いんだよな。だから出来れば話して欲しいよ。その為なら何だって、そう、博士に頼んで猫にもっとも嫌われるトリモチを作ってもらったりも、志保に頼んでお前等の病理検査一週間コースを組んでもらったりもする。無論お前の食事が全部尾頭付きだったりヘイジは納豆づくしだったりサグルは一切世話させねーとか他にも色々考えてたんだけど、やっぱインパクトが強い方法を最初にかました方が力関係の把握も一発で出来ていいだろうからこの方法を選んだんだよ。どうだ、博士特製とりもち。葛餅並の手触りとアロンアルファ並の接着力。取る時は専用洗浄液が必要だったりすんだよな。あ、床には前もってそれ塗っておいたから大丈夫だし。これでもお前等が何も言う事はありませんってんなら、まあ、次は志保に頼んで―――」
「ごめんなさい俺が悪かった言います言いますから早く取ってええええええッッ!!!!!!」

 にこやかに優しい声で恐ろしいことを言い続ける新一に、猫の王子は呆気なく陥落した。

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